様々な事情で離婚したい、と思う人もたくさんいるかと思います。しかしながら、実際に離婚するとなると、色々な準備が必要になってきます。
ここでは詳しくどういった流れで進めるか、法律も問題はどうするかなど、解決するべき問題についてご説明致します。
親権とは、成年に達しない子を監護、教育し(身上監護権)、その財産を管理(財産管理権)するため、その父母に与えられた身分上及び財産上の権利義務の総称のことをいいます。
子供の身の回りの世話や教育・しつけなど、生活全般の面倒をみる権利
子供に代わり財産を管理したり、未成年者には認められていない法律行為(契約など)を行う権利
(a)1.身分行為の代理権 | 嫡出否認の訴えの被告(民法第775条) 認知の訴えの提起(民法第787条) 子の氏の変更(民法第791条) 養子縁組の代諾(民法第797条) 未成年養親の場合の縁組の取消(民法第804条) 協議離縁(民法第811条) 離縁の訴えの提起(民法第815条) 親権の代行(民法第833条) |
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(a)2.身分行為の同意権 | 未成年者の婚姻についての同意(民法第737条) |
(a)3.分属監護権 | 看護・教育権(民法第820条) 居所指定権(民法第821条) 懲戒権(民法第822条) 職業許可権(民法第823条) |
離婚により親権者とならなかったとしても親でなくなったということではありません。
離婚後、親権者または監護者にならなかった方が、子供に面会したり一緒に時間を過ごしたりすることを面接交渉と言い、その権利を面接交渉権と言います。
この面接交渉権は、民法などの条文に規定された権利ではありませんが、判例や家庭裁判所の実務でも認められている、親として当然持っている権利です。
ただし、面接交渉が認められる基準は子供の利益、子供の福祉です。会うことで子供に悪影響があるような場合には、権利はあっても面接交渉権が制限されます。
親権者と監護者の生活環境や収入の変化などにより、子供の利益と子供の福祉のために必要がある場合に限り、親権者と監護者を変更することができます。
親権者を変更するときは、家庭裁判所に親権者変更の調停・審判を申し立てなければなりません。 親権者変更の申し立ては、両親の他、子供の親族でも申し立てることができます。子供自身に申し立てを行う権利はありません。監護者の変更は、親権者の変更の場合と異なり、父母の合意があれば話し合いだけで行うことができます。
親権者変更 | 監護権者変更 |
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親権者は,離婚の際には協議で決定することが可能です。しかしながら、一旦離婚が成立して親権者が決定した後は、家庭裁判所の手続きを経なければ変更することができません。 家庭裁判所への申立は,調停・審判のどちらでも可能ですが、審判で申し立てても家庭裁判所は職権でいつでも調停に回すことができます。 |
監護権者の変更については,「子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護すべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。」(民法766Ⅱ)とされています。 |
慰謝料とは、離婚によって被る精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことです。
慰謝料は、性質上2つに分類されます。
離婚原因となる個別の有責行為によって生じた精神的苦痛に対する損害の賠償
(離婚原因慰謝料)
離婚により配偶者の地位を失うことから生じた精神的苦痛に対する損害の賠償
(離婚自体慰謝料)
(1)不貞行為(不倫・浮気) | 慰謝料の認容額ですが、200万円~300万円程度が多いです。 |
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(2)暴力 | 暴力の程度にもよるため一概には言えませんが、過去の判例では、夫が妻をしばしば殴打するなど、妻の人格を無視する行動に及んだと認定した上で、慰謝料300万円を認めた事例があります。 |
(3)性交渉拒否・性的不能 | 事例によって、慰謝料額は150万円~500万円までと異なります。 |
(4)婚姻生活の維持に協力しない | 一方当事者に精神疾患があり、夫婦としての共同生活が営めないような場合です。 |
(5)悪意の遺棄 | 妻及びその親族に対していやがらせの電話や通信を繰り返すという積極的な行為をした事案で、慰謝料500万円を認めた事例があります。 |
養育費について取決めをした後に、事情が変わった場合には養育費の増減額の請求をすることができます。具体的な手続きとしては,養育費の増減額を求める調停・審判を申し立てることになります。事情の変更として認められるのは、最初の取決め時から一定期間が経過し、相当程度事情が変わった場合です。
よくおこる問題の一つです。養育費の請求債権は他の金銭債権と同様、法律上正当に認められる債権となりますから、相手方の財産を差し押さえることもできます。
婚姻費用とは,簡単に言えば「生活費」のことです。配偶者の収入・財産に応じた生活水準が必要とする生計費・交際費・医療費等の日常的な支出や、配偶者間の子の養育費・学費・出産費等を含む、婚姻から生ずる費用のことを言います。
夫婦が別居に至った場合も、婚姻生活は継続しているので各自の生活費や子どもの養育費は婚姻費用として分担すべきことになります。
そのため、実際に婚姻費用の分担が問題となってくるのは主に別居状態になった場合です。
婚姻費用分担の協議; | 調停・審判の申し立て |
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もっとも簡単な方法は、当事者間の協議(合意)です。この場合、ご夫婦の生活水準や収入・財産、子どもの有無等によって変わってきます。 もっとも、婚姻費用の算定については、実務上、算定表による算定方式が一般的です。 この算定表は、調停や審判になったときに用いられますが、協議であっても、この算定表を参考とする傾向にあります。 |
婚姻費用の分担額が話し合いで定まらない場合には、裁判所に調停の申立をすることになります。 調停が成立しない場合は、審判となります。 調停・審判手続きでは、法的知識・経験が武器となりますので、弁護士を代理人とすることが望ましいと言えます。 |
財産分与とは、離婚した相手に対して財産の分与を請求することを言います(民法768条1項)。
離婚するにあたり、特に気になる問題の一つが、経済的な事情です。今後の生活や、これまで築いてきた財産がどうなるのか、ということが気になることは当然のことです。つまりは、財産分与は離婚に伴う金銭面に深く関わる権利です。
(1) 夫婦が婚姻中に協力して築いた財産の清算(「清算的財産分与」)
(2) 離婚後の経済的に弱い側への扶養料(「扶養的財産分与」)
(3) 浮気等、離婚相手が原因で離婚に至った場合の慰謝料(「慰謝料的財産分与」)
財産分与で特に問題となるものは、(1)清算的財産分与です。
清算的財産分与の対象となる財産は下記の表のようになります。
種類 | 性質 | 分与の対象 |
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特有財産 | 名実ともに一方が所有する財産 | 原則としてならない |
実質的共有財産 | 名義は一方に属するが夫婦が協力して取得して得られた財産 | なる(なお、夫婦のどちらかに属するか不明な場合は共有財産と推定) |
大きく分けて3つのパターンがございます。
話合いによる手続き | 調停・審判による場合 | 訴訟による場合 |
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ご夫婦の話合いによって解決する方法。 この方法がもっとも早く、また費用も掛からずに済みます。 あらかじめ財産分与について検討し、離婚と同時に協議を成立させるという方法のほか、離婚を先に済ませてから財産分与について協議するという方法もあります。 |
離婚に関する調停・審判の中で、離婚とあわせて財産分与についても主張するという方法. 財産分与請求権は離婚してから2年が経過すると、消滅してしまいます。 したがって、離婚が成立した後で財産分与請求をしようとお考えの方は、離婚時から2年以内に調停・審判を起こす必要があることにご注意ください。 |
調停・審判でまとまらない場合には、訴訟で結論を出すことになります。 財産分与の請求は、離婚訴訟にあわせて行うことができます。 |
大きく分けて3つのパターンがございます。
*離婚等で裁判や公訴が必要な場合は提携している弁護士を紹介致します。
財産の種類 | 不動産 (家、土地、アパート、マンション、駐車場など) |
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必要書類 |
・戸籍謄本(離婚の事実を確認できるもの) ・固定資産課税明細書(固定資産評価証明書) |
ご依頼後 当職が作成する書類 |
・登記原因証明情報 |
離婚をした際に、婚姻期間中に支払った保険料は夫婦共同で納めたものとみなして、将来の年金額を計算することが出来る制度です。
平成16年度の法改正によって、当事者の合意、もしくは裁判所の決定があれば婚姻期間についての厚生年金を分割し受け取ることが出来ます。
1、合意分割制度
平成19年4月1日以後に離婚をした方が対象となっており、その日以降に離婚をしていれば、婚姻期間中の全てが分割の対象となります。分割の割合が決定すれば、年金分割の請求を行うことが出来ます。
*平成19年4月1日前の婚姻期間中の厚生年金記録も分割の対象となります。
2、3号分割制度
平成20年4月1日以後に離婚をした方が対象となっており、第3号被保険者期間(専業主婦が多い。また、婚姻期間中、専業主婦であった期間)に行われる年金分割制度で、夫婦双方の合意や裁判所の決定を必要としません。
・離婚成立後から2年以内に請求を行わなければ、分割が出来なくなる場合があります。
・保険料未納などで年金の受給資格がない場合、離婚時の年金分割が行われても、年金は貰えません。
・離婚までに受給資格期間を満たしていない場合、離婚後の公的年金の支払いをしなければなりません。
・どうしても保険料が払えない場合、保険料免除制度というものもあります。
*こちらに関して詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせ下さい。
元々の戸籍筆頭者(一般的には父親)が子の親権者になる場合は
子の名字や、戸籍に関する手続きは何も必要ありません。
ここでは、離婚によって元の戸籍を離れる方の親が、子の親権者となる場合について説明をします。
子と親権者が、同じ名字を名乗る為には、方法が2つあります。
1)親権者自身が、旧姓に戻り、子を同じ名字にする方法(子の名字が変わる)
2)親権者自身が、婚姻中の氏をそのまま名乗る方法(子の名字は変わらない)
なお、自身が婚姻中の氏を名乗る方法を選択した場合でも、子は元々の戸籍に入ったまま
なので、子を親権者と同じ戸籍に入れる為には手続きが必要です。
1)自身が旧姓に戻り、子を同じ名字にする方法(子の名字が変わる)
家庭裁判所に『子の氏の変更』を申し立てる
子の住所地を管轄する家庭裁判所に対し『子の氏の変更』を申し立てます。
なお、子が15歳未満の場合は、親権者などの法定代理人が申立をします。
一方、子が15歳以上の場合は、子本人が申立人となります。
家庭裁判所から許可を得た後に、子の本籍地又は届出人(親権者)の住所地の役所に、届出をします。
親権者の戸籍に子を入れる事により、親権者と子の名字が同じとなります。
また、2)を選択した場合も、子を同じ戸籍に入れる為には
「子の氏の変更」を家庭裁判所に申し立てます。
子の戸籍を移動する為には、子は元々の戸籍の名字「A」から
2)の選択をした親権者の名字「A」に変える手続きが必要です。
2)親権者自身が婚姻中の氏を名乗る方法(子の名字は変わらない)
本籍地もしくは住所地の役所に『婚氏続称』の届出(戸籍法第77条の2の届出)を出す
※ 離婚と同時又は離婚後3ヶ月以内に届け出が必要です
親権者の本籍地又は住所地を管轄する役所に対し、婚姻中の氏を称する届出を行う事で
婚姻中の氏をそのまま使えます。
ただし、先述したとおり、子の戸籍は元のままなので、子の戸籍を親権者と同じくするためには
子の住所地を管轄する家庭裁判所に対し「子の氏の変更」申立が必要です。
また、婚氏続称の届を出したのちに、事情により旧制に戻りたい場合は、
家庭裁判所の許可が必要となり、「やむを得ない事由」が必要となります(戸籍法107条1項)
小川雅史ブログ記事:離婚後の名字はどうなる~子が成人した後~
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