離婚後も、引き続き婚姻中の氏を使用する「婚氏続称の届(戸籍法第77条の2の届出)」
子供の社会生活への影響に配慮し、離婚する事で子供の名字が変わる事を避ける為に
婚姻中の氏を引き続き使用するという選択は、ごく一般的にされています。
一度婚氏続称の届を出すと、婚姻前の旧姓に戻る事は簡単ではなく、
氏の変更許可申立を家庭裁判所に申述しなければならず、家庭裁判所の許可を得るには
氏を変更する事に対し「やむを得ない事由」が必要となります(戸籍法107条1項)
子供の社会生活に配慮して婚氏続称の届を出した場合、
子供が成人した事を機会として、旧姓に戻りたいと考える事は
「やむを得ない事由」に当たるのでしょうか?
裁判所のいう「やむを得ない事由」とは
氏の変更をしないと、その人の社会生活において著しい支障を来す場合、とされています。
裁判官は申立てに「やむを得ない事由」があるかどうかを審理し、判断しますが、
一般的に、姓名判断を理由とするものは認められていません。
過去の裁判例には
氏は、社会生活をするうえで、個人の同一性を識別するために重要な意義を有しているから、やむを得ない事由がなければ変更できない、としながらも、自らの意思を抑えて婚氏を続称する者がいることを社会的事実とし、婚氏を継続使用した者が、婚姻前の氏への変更を求める場合は、一般の氏の変更の場合よりも「やむを得ない事由」の有無の判断は緩やかに解釈するのが相当である。
との見解を示した例があり、婚氏続称の届を出した人が、婚姻前の旧姓に戻る場合は
その事情を考慮した判断が下される場合がある、というのが現状です。
裁判所の許可がおりた後は
「審判書謄本」と「確定証明書」をもってお住いの市区町村へ届け出る事で、氏が変更されます。
裁判所へ申立をしてから、許可を得て氏を変更するまでにかかる期間は、凡そ2カ月程です。
自身と同じ戸籍に子供がいる場合は
変更申立を行った自身の戸籍の中に子供が居る場合は、子供の氏も変わります。
子の氏は変えず、自身の氏だけ旧姓に変えたい場合は、子供を分籍した後に
家庭裁判所に申立をします。
離婚の届出から3カ月以内に申請しなければならない「婚氏続称の届(戸籍法第77条の2の届出)」
熟考するには、やや短いと感じるところです。
2022年 9月 20日 | 離婚関係
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