「親の看護をしてきた」
「勤めていた会社を辞めて、家業に従事してきた」
など相続発生時には相続人それぞれに考慮してほしい事情があります。
今回は、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者の
相続分をプラスする『寄与分』についてお話しします。
『寄与分』が認められるケースとは?
相続分を決める際、『被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者』の相続分をプラスすることを『寄与分』といいます(民法第904条の2、一部抜粋)。
寄与分が認められるポイントは、以下の3点です。
①相続人であること
②特別な貢献をしたこと
③遺産の維持・増加に貢献したこと
具体的なケースとして
各項目について、一つずつ見ていきましょう。
①相続人であること
寄与分の主体となりうるのは、相続人に限られます。
ただし、現在、相続法の改正が議論されており、寄与分の主体が相続人以外に広がる可能性もあります。
②特別な貢献をしたこと
寄与分は、特別な貢献をした場合のみ認められます。
通常期待される範囲の貢献では認められません。
たとえば、夫婦間の協力扶助義務(民法第752条)、親族間の扶養義務・互助義務(民法第877条1項)の範囲内の行為は、特別な貢献には該当しません。
また、対価をもらっている場合も特別な貢献とはいえません。
③遺産の維持・増加に貢献したこと
寄与分は、遺産の維持・増加に貢献していなければなりません。
単なる精神的なサポートをしただけでは、該当しないのです。
寄与分として認められる代表的なものは以下のとおりです。
・家業である農業、商工業等に従事した
・被相続人のために金銭的な援助をした
・被相続人に対して療養看護をした
・仕送りをしていたなど、被相続人の扶養を行っていた
・被相続人の財産を管理することで、財産の維持形成に寄与した
寄与分として認めてもらうための工夫
寄与分の額をいくらにするかは、具体的に法律で定められてはいません。
そのため原則として、相続人の話し合いによって決定します。
話し合いで決着がつかない場合は、家庭裁判所の調停や審判により、寄与分を定めることになります。
寄与分に該当すると認めてもらうためには、“どれだけ貢献してきたか”がわかるように証拠を残しておくことが大切です。 金銭的な負担があった場合には、領収書などを保管し、いくら負担したのかわかるようにしておきましょう。 また、どのような貢献をしてきたか、写真や日記に書き留めておくのも1つの方法です。
2019年 8月 5日 | 法律豆知識
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