こんな株主構成で社長に相続が発生しました。
この会社は定款でこう定めています。
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(相続人等に対する売渡しの請求)
第7条 当会社は、相続その他の一般承継により、当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。
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そこでBは株主総会を開き、Aの株60%を会社が買い取る旨の決議をします。
CはAの相続人であるため、この株主総会の議決権はなくB一人で決議されます。
会社が保有する株に議決権はないため、結果として取締役Bの議決権は全体の4分の3となりB一人で特別決議が可能となります。
こうして会社乗っ取りが法的に可能となるのです。
この対策として有効なのが遺言です。
Aが生前に、遺言で『特定の人間に承継したい』旨を書いておけば
Bが一人で決議した「会社が社長の株を買い取ること」にはなりません。
ここで一つ、注意点があります。
一般的に、遺言で相続人に遺産を残す場合「~に相続させる」という表現が使われます。
「相続させる」と書くことにより、様々なメリットがありますが
株式に限定して言えばこの表現は使うべきではありません。
会社法施行後、定款で「相続人に対する売渡の請求」を定めていませんか?
先ほどのBもこの規定により社長の株を会社が買い取る決議を行いました。
遺言で「Aのもつ株式をCに相続させる」と書いた場合、
相続人が株式を『一般承継』したことになり、会社定款の規定にある
「相続人に対する売渡の請求」規定が働き、会社が買い取る旨の決議が可能となってしまいます。
では、どうするべきか?
Aが生前に遺言で「Aのもつ株式をCに遺贈する」とすれば、Cが株式を『特定承継』したことになり
定款の規定から外れるためCが株式60%を引き継ぐことが出来るのです。
遺言は紙とペンと印鑑があれば誰でも作成できます。
しかしながら細かい文言によって結果は180度変わってくるのです。
こちらも参考に
これまで相続や遺言書作成に携わってきた中で感じた事などをコラムや注意書きとしてまとめています。
2022年 6月 13日 | 商業登記
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